経営計画で変わる!最新白書に学ぶ強い組織3つの条件
初夏の爽やかな風が吹き抜ける季節となりましたが、経営者や幹部の皆様、今期のスタートダッシュはいかがでしょうか。最近、岐阜県内の中小企業様からも「人手不足で現場が回らない」「人件費が高騰して利益が残りにくい」といった切実なご相談をいただく機会が増えています。
こうした環境変化を乗り越えるため、今多くの企業で「人への投資」や「生産性向上」の取り組みが進められています。しかし一方で、「幹部が指示待ちで、自分で考えて動かない」「ビジョンを作っても現場に響いていない」と頭を悩ませる経営者様も少なくありません。
日々の業務に追われる中で、一体どこから手を付ければ組織は変わり始めるのでしょうか。先日発表されたばかりの最新の公定データを基に、これからの時代を生き抜く強い組織のあり方について、皆様と一緒に考えてみたいと思います。
最新データが示す「経営計画」と生産性の深い関係
中小企業庁が発表した最新の『中小企業白書』および『小規模企業白書』では、現代の「労働供給制約社会(深刻な人手不足)」を乗り越える鍵として、経営陣や幹部が持つべき「経営リテラシー」の重要性が大きくクローズアップされています。
データによると、経営リテラシー(財務・会計、組織・人材、経営戦略などの知識)が高い企業ほど、売上や人材確保において明確なプラスの影響が出ていることが分かりました。
計画を「作るだけ」で終わらせないPDCAの力
白書の分析の中で特に注目したいのが、「事業目標や経営計画を策定し、それを基にPDCAサイクルを回している企業ほど、労働生産性が圧倒的に高い」という事実です。
目標を定め、現状の課題を抽出し、活動計画を組織内で共有するプロセスが機能している会社は、変化に強い「強い中小企業」へと成長しています。逆に、形だけの計画になっていたり、社長の頭の中にしか方針がなかったりする企業では、現場が部分最適で動いてしまい、生産性が上がりにくい傾向にあります。
なぜ「言われたことしかやらない」になってしまうのか
「うちの幹部には当事者意識が足りない」と感じる時、その原因は個人の能力不足ではなく、実は「会社の方針やビジョンが現場のマネジメント層にしっかりと共有されていないこと」にあるケースが多々あります。
全体を俯瞰する経営目線や共通の目標がないまま「現場を管理せよ」とだけ言われてしまうと、管理職層も部下に対して適切な役割や責任を伝えることができず、「報連相ができない」「指示待ちの部下ばかりになる」という悪循環に陥ってしまいます。経営計画という「上流」の意思決定にミドル層を巻き込んでいくことが、自走する組織をつくる第一歩となります。
「自走する組織」をつくる3つのステップ
では、経営計画を軸にして、どのように現場のマネジメント層の意識を変え、組織の一体感を高めていけばよいのでしょうか。ここでは、社員の皆様が主役となって動くための、具体的な取り組みのイメージを3つのステップで整理してみましょう。
ステップ1:現状の課題抽出とビジョンの言語化
まずは経営陣と幹部メンバーが机を囲み、自社の客観的な財務状態や現場のリアルな課題をざっくばらんに洗い出すことから始めます。現在のリスクと将来の成長性を一緒に整理し、「我が社はどこを目指すのか」という理念やビジョンを改めて言葉にしていきます。この上流の意思決定のプロセスを共有すること自体が、幹部の経営目線を養う最高の教育機会となります。
実際に、当社の伴走支援(計画策定支援)において経営者様と一緒にビジョンを整理する際も、こうした客観的なリスクと成長性の整理を丁寧に行います。そして、方針説明会やマネジメント研修などを通じて管理職層へ繰り返し説明することで浸透していきます。研修後のアンケートでも経営層への理解度が上がり、組織管理の方向性が定まったという感想も多くなっています。
ステップ2:1年間の具体的な「活動計画」への落とし込み
ビジョンが決まったら、それを「絵に描いた餅」にしないために、現場が動けるレベルの具体的な活動計画(アクションプラン)に落とし込みます。単に数字の目標を追いかけるのではなく、「誰が、いつまでに、どのような仕組み(マニュアル等)を作るか」を明確にします。自分たち自身で頭を悩ませて作った計画だからこそ、現場に責任感が生まれ、当事者意識が育ち始めます。
この現場が動けるレベルの具体的な活動計画はマネジメント層が作成していきますが、上位方針を理解し、何をすべきかが理解できることで具体性が高まります。実際の支援でも、具体的な計画が立つことで、組織メンバーから何をすれば良いかが分かり易くなってやりやすいといった声が聞かれ、成果が高まっている様子を目にします。
ステップ3:楽しく学び、PDCAを回し続ける環境づくり
計画がスタートした後は、定期的に進捗を確認し、軌道修正を行うPDCAの仕組みが不可欠です。管理職層が一人で責任を負うのではなく、組織全体で一緒に取り組むことで、前向きな振り返り、軌道修正なども可能となっていきます。
ハーツでは、このプロセスにおいて「楽しく学び、成長すること」を大切にしています。お互いの役割や責任を責め合うのではなく、グループワークやコーチングの手法を取り入れながら、部署間のコミュニケーションの壁を壊し、会社全体の凝集性を高める関わり合いを特に意識しています。
白書で書かれている内容から実行すべきステップを整理してきました。しかし、普段の関係性の中で、いきなりこうした取組みを行うことはとても難しいですよね。特にマネジメント層から、こうした新たな取り組みへの抵抗感についての相談をよく受けます。
そうした際に、「外部支援を受けてチャレンジするようにアドバイスを受けた」、「研修課題で組織内での共有をしなければならない」といった前置きができたことで、経営層や管理職層からは実行しやすかったといった声が、部下の方々からは受け入れやすかったといった声が届いています。
トピックス:前向きな挑戦を支える最新支援策
これまでお伝えしたような「経営計画の刷新」や「次世代リーダーの育成」を推進するにあたり、国や地方自治体では、中小企業の投資リスクを軽減するための様々な支援策を用意しています。今月直面している環境変化の中で、有効活用できる身近なトピックスをご紹介します。
投資リスクを抑える補助金
デジタル化・AI導入補助金 第3次【申請締切:2026年7月21日】
補助金の目的
中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する様々な制度変更(働き方改革、被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイスの導入)等に対応するため、生産性向上に資するITツール(ソフトウェア、AI、サービス等)を導入するための経費の一部を補助し、中小企業・小規模事業者等の生産性向上を図ることを目的としています。
利用検討のポイント
① 事務局に登録された信頼性のある「ITツール」の導入投資であること
あらかじめ事務局に登録されたIT導入支援事業者が提供する、登録済みのITツール(ソフトウェア、オプション、役務)を導入する費用が対象となります 。なお、ハードウェア単体(パソコン・タブレット等の本体費用)や中古品、交付決定前に購入したITツールは通常枠の補助対象外です。
② 目的とする補助額に応じた「業務プロセス数」を満たすIT投資
通常枠には申請額に応じて2つの区分があり、企業の抱える課題や導入ツールの規模に合わせて選択します。
・補助金申請額5万円〜150万円未満:1プロセス以上の機能(顧客対応や会計など)を含むツールが対象。
・補助金申請額150万円〜450万円以下:より広範な経営改善を目的として、4プロセス以上の機能を一括で導入する大型のIT投資が対象。
③ クラウド製品の選定や、サイバーセキュリティ対策を意識したシステム投資
国のクラウド・バイ・デフォルト原則に基づき、クラウド製品の選定は審査において加点対象となります。また、申請にあたっては独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の一つ星または二つ星のセキュリティ宣言を行うことが必須要件となっています。
④ 3年間の事業計画で「労働生産性」を一定以上向上させる確実な計画
交付申請時点の翌事業年度以降3年間で、1年後に労働生産性を3%以上(過去に一定のIT導入補助金の交付決定を受けている場合は4%以上)向上させ、さらに計画期間中の年平均成長率も3%以上(過去受給者は4%以上)向上させる、合理的で実現可能な計画の策定が必要です。
⑤ IT投資の成果を踏まえた「賃金引上げ計画」の策定と表明・実行
補助金申請額が150万円以上の場合は賃上げ目標が必須要件となり、3年間の事業計画期間において「1人当たり給与支給総額」を年平均3%以上増加、かつ「事業場内最低賃金」を地域別最低賃金+30円以上にする計画を策定し、事前に従業員へ表明しなければなりません 。なお、150万円未満の申請では加点項目として扱われますが、過去の特定の交付決定事業者の場合は必須要件となります 。(※要件未達の場合、原則として補助金の返還義務があります 。)
省力化投資補助金 一般型 第7回【申請締切:2026年7月下旬】
補助金の目的
人手不足に悩む中小企業等に対して、IoTやロボット等の人手不足解消に効果があるデジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入を支援する制度です 。省力化投資を促進することで、中小企業等の売上拡大や付加価値向上、生産性向上を図り、最終的に賃上げへとつなげていくことを目的としています 。
利用検討のポイント
① 自社の業務に合わせて設計・開発される「オーダーメイド設備」への投資
単に汎用設備を単体で導入する事業は対象外となります。外部のシステムインテグレータ(SIer)等と連携し、自社の個々の業務や作業工程、事業所のレイアウトに合わせて専用で設計・開発された機械装置やシステムの導入投資(または、汎用設備を複数組み合わせて高い省力化効果を生み出す投資)が対象です。
② 単価50万円(税抜き)以上の「機械装置・システム構築」が必須の投資
補助対象経費として、必ず1つ以上、単価50万円(税抜き)以上の機械装置や専用ソフトウェア・情報システム等の設備投資を含む計画である必要があります。なお、中古品の購入費は対象外となります。
③ 設備導入による「業務時間(人手)の明確な削減」が見込める計画
設備を導入することによって、対象となる業務プロセスや配置のビフォーアフターが明確であり、既存業務(または新規出店時の新たな業務プロセス)に要していた時間をどれだけ削減できるかという「省力化指数」を算出できる投資計画が求められます。
④ 3〜5年の期間内で「労働生産性の向上」を達成できる成長投資
補助事業終了後の3〜5年の事業計画期間において、毎年、申請時と比較して「労働生産性(付加価値額÷労働者数)」を年平均成長率(CAGR)4.0%以上向上させられる、確実性の高い投資計画を策定する必要があります。
⑤ 投資の成果を原資として「確実な賃上げ」を表明・実行できること
事業計画期間終了時点において、「1人当たり給与支給総額」を年平均成長率3.5%以上増加させる目標を設定し、交付申請時までにすべての従業員等に表明して達成を目指す投資である必要があります。(※目標未達の場合、達成率に応じた補助金の返還義務があります 。)
※ 本コラムに掲載している補助金・助成金情報は2026年6月時点のものです。補助金の要件や公募期間は随時更新されるため、申請の際は必ず各補助金の事務局が発行する最新の公募要領をご確認ください。
まとめ
今回は、最新の中小企業白書から見る「経営計画と生産性の関係」、そして自走する組織をつくる具体的なステップについて考えてきました。
厳しい市場環境が続きますが、裏を返せば、今ここで「経営計画の見える化」と「マネジメント層への教育」という上流から下流までのベクトルを合わせることができれば、他社との大きな差別化と確実な企業成長を実現できます。
まずは、はじめの一歩として、自社の3年後や5年後にはどのような状態になっていると良さそうかを想い描いてみることから始めてみましょう。売上高や利益だけでなく、働く従業員の方々の表情や、会話の中で聞かれる声などをイメージしていきます。将来のありたい姿を映像で想い描くことがビジョンづくりの第一歩です。
そして、ビジョンを言語化して管理職層に伝え、経営計画を各組織の計画に落とし込んでいくことで、強固な組織となっていきます。
当社サービスの紹介
ハーツ株式会社では、企業の方向性と連動した一貫性のある「全体支援」をはじめ、企業の持続的成長に伴走する各種サービスを提供しています。
計画策定支援
中期経営計画や年度方針、新事業戦略の立案など、リスクと成長性を整理。投資対効果を含む具体的な収支計画を立案し、高度な経営判断をサポートします。社外からの客観的な視点により多面的な評価が行えるため、セカンドオピニオンとしても有用です。
人材教育(マネジメント研修・コーチング)
管理職に必要なマネジメントスキルと自分自身の幸せについて考える、各社の状況に合わせたテーラーメイド型の教育プログラムです。「楽しく学び、成長すること」を大切に、コンサルティングとコーチングによるアプローチを取り入れ、グループワークを通じて社内の関係性向上にも寄与します。自組織の環境を題材(ケーススタディ)とした実践的なシミュレーションが行える仕組みを構築しています。
- 【基礎編】 目標と計画の策定: 1年間の活動計画を立て、組織全体で動ける体制を構築。
- 【応用編】 計画に沿った組織の管理と成長: 組織変革に取組み、高い成果を出すスキルを磨く。
- 【飛躍編】 組織や事業の戦略立案: 中期的な戦略手法を学び、次世代の経営幹部の土台を構築。
仕組みづくり支援
定性的な情報を具体化し、社内のノウハウの蓄積を図り、競争力を強化。「自分たちで作った仕組みでなければ運用されない」という原則のもと、現場に定着する強固な基盤を構築します。社内プロジェクト型での支援を通じて、推進担当者へのフォローなど、新たなプロジェクト推進の方法を体系的に学べる機会となっています。
短期的な研修で終わらせず、目標設定から計画管理まで、貴社の経営課題に100%特化して徹底的に長期伴走する「企業伴走パッケージ」を各種ご用意しております。ぜひお気軽にご相談ください。
