数字の罠に騙されない!PLから正しい改善策を導く3つの視点

前回のコラムでは、会社の健康診断として毎月のPL(損益計算書)で「粗利」と「営業利益」をチェックする重要性について整理をしてみました。自社の今の健康状態が分かったら、次はいよいよ「具体的な改善策(処方箋)」を考えるステップです。 しかし、PLの数字を眺めているだけでは、時に経営判断を誤らせる「数字の罠」に陥ってしまうことがあります。今回は、目先の数字に惑わされず、会社の未来の成長につながる正しい改善策をどのように導き出せばよいか、3つの視点から皆様と一緒に考えてみたいと思います。

1. 「金額」の増減と「率」の変化で異なる改善の考え方

PLの数字を見るときは、「金額」の動きと「率(割合)」の動きを分けて捉えることが鉄則です。

例えば、前回のコラムで注目した営業利益を例に考えてみましょう。もし「今月は営業利益の『金額』が減ってしまった」という結果だけを見た場合、すぐに「経費を削らなければ」と短絡的に考えてしまいがちです。

しかし、同時に「率」に目を向けてみると、実は「営業利益『率』」は下がっておらず、単に季節要因などで全体の売上ボリュームが一時的に小さくなっただけ(効率は落ちていない正常な状態)というケースもあります。逆に、営業利益の金額が変わっていなくても、営業利益率が急激に下がっている場合は、本業の稼ぐ力が衰え始めているサインという場合もあります。

「金額が増減したから動く」のではなく、「率」を並行して確認することで、改善すべき対象が「無駄な支出(金額)」なのか、それとも「製造や販売のプロセス効率(率)」なのかを正しく見極めることができます。

2. 改善の方程式は3つではない!「売上向上×コスト増加」の視点

経営改善というと、多くの場合は「売上を伸ばしてコストを維持する」か、あるいは「売上を維持してコストを下げる(コストカット)」、もしくは、その両方を行うの3つのパターンを思い浮かべるのではないでしょうか。

体重増加が気になったときに、「食事制限(摂取カロリーの低減)」か「運動(消費カロリーの増加)」で対策を考えるのと同じですね。でも、もっと美味しいものを食べたいときには、食事制限以上に運動すれば良いという方法もあります。

今回は、変化の激しい現代において4つ目の方程式である「売上向上×コスト増加」という視点について考えてみたいと思います。

成長投資という考え方

これは、新しい製品の開発、DX(デジタル化)による業務の仕組みづくり、あるいは人材教育といった「未来への投資(コスト増加)」を戦略的に行うことで、それを大きく上回る「売上の向上」を実現するという考え方です。目先のコストを削ることだけが改善ではなく、「どこに効果的にコストを投入すれば、より大きな成果が返ってくるか」という攻めの視点を持つことが、持続的な企業成長には欠かせません。

しかし、収益の低下が見られて、経営が悪くなってきたから改善しようと思っているのにさらにコストをかけるリスクに心配になってしまいます。そうしたリスクを軽減するために、以前紹介した補助金や助成金を活用するという選択肢もあります。

成長投資のリスクを低減するための判断時期

もう一つ、この成長投資を行うにあたってのリスクを低減する方法は、早めにやるということです。毎月のPLで変化を把握していることで、早めに手を打つことができます。

新たな投資で経営危機を脱したいと考えて、補助金申請を活用した投資を行いたいとなったときの経営状態で見てみます。その時点ではまだ経営に余裕があれば、大きな投資に対して金融機関からの借入も行いやすく、投資の選択肢も広がります。しかし、既に経営リスクが表面化している状態だと、補助金が採択されても金融機関からの借入ができずに、辞退しなければならないこともあります。

そうした面でも、毎月の経営状況の確認が必要であり、そこから改善検討を早めに行うことがとても重要です。

3. コスト削減の罠!人材や設備を削っても会社の「付加価値」は変わらない

「営業利益が下がってきたし、最近は人件費も高騰しているから人件費を抑えたい」といった話を聞くことも増えています。生産性や効率性を上げて、少ない人数や今の従業員数でも高い売上高を出していくことには賛成しますが、単純に人件費だけを下げることはおすすめしません。

なぜなら、これらのコストは単なる「削るべき無駄遣い」ではなく、会社の大切な「経営資源(ヒト・モノ・カネ)」を維持・成長させるための原資そのものだからです。

【ヒト】にかけるコスト = 人件費(ともに働く仲間のエンゲージメントや成長)

【モノ】にかけるコスト = 減価償却費(過去の投資の回収と未来への設備維持)

【カネ】にかけるコスト = 営業利益(次の成長へ充てるための原資)

会社の「稼ぐ力」の本質は、営業利益の数字そのものだけでなく、これら経営資源を活用して会社が世の中に生み出した「付加価値額」にあります。付加価値額は、主に「営業利益 + 人件費 + 減価償却費」などの総和(※厳密には他の費目が含まれることもあります)で表されます。

つまり、人件費や減価償却費を無理に削って、帳簿上の「営業利益」を一時的に増やしたとしても、会社全体が生み出している「付加価値額の総量」は変わっていないのです。

それどころか、大切な経営資源である「ヒト(人材)」への投資を削ればモチベーション低下による離職リスクが高まり、「モノ(設備)」への投資を削れば将来の生産性が落ちてしまいます。これでは会社の基礎体力を急速に奪うだけで、本質的な経営改善にはなりませんので、注意が必要なポイントです。

まとめ

今回は、PLの数字から真の改善策を導き出すための視点について考えてきました。

「金額と率の違い」「攻めの投資(コスト増加)」「付加価値額と経営資源の意識」というフィルターを通してPLを見ることで、自社が本当に打つべき次の一手が見えてくるはずです。

まずは、直近のPLを見ながら、今後の成長に向けた方向性として、どの費目に注目すると良さそうかを見てみるところから始めてみませんか。未来に向けた強い組織づくりを、これからも一緒に進めていきましょう。

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