会社の健康診断!毎月のPLで経営リスクを見極める2つの要点

激しいコスト高や市場の変化に直面するなか、経営層の方々と話をすると「資材高騰の影響で利益が低下している」などの困りごとを聞くことが多くあります。そのときに、「どれくらい利益が低下したか?利益というのはどの利益か?」という問いに対して、明確に「粗利益が3%落ちてきました。今後さらに低下する可能性があります。」と答えられる方もいらっしゃれば、数字を把握していない状態の方もいらっしゃいます。

そんなとき、「最近太った?って言われるんだよ。たしかにそうかなとは思うけど、あんまり変わってない気がするんだけどな。体調も良いし問題ないでしょ」という他人事ではない会話を思い出したりします。

自分の体の健康を見るために、体重や血圧を毎日測定すると良いという話はよく耳にしますが、会社も同じです。会社の現状(健康状態)を正しく知るために、最も身近で重要なのが「PL(損益計算書)」です。「決算の時にしかじっくり見ない」とか「顧問税理士さんに任せてて見たことが無い」という方もいらっしゃいますが、毎月のPLを正しく読み解くことこそが、経営のリスクを未未防ぐ最高の健康維持になります。今回は、社内の健康診断として毎月のPLでどこをチェックすべきか、皆様と一緒に考えてみたいと思います。

1. なぜ毎月の「PL確認」が最強の経営診断になるのか

確認の頻度は「毎月」が鉄則。変化の予兆をキャッチする

年に1回の決算書は、いわば「過去の確定した通知表」です。しかし、市場やコストが目まぐるしく変わる現代において、過去1年のデータをもとに対策を立てていては手遅れになってしまうリスクがあります。

毎月(月次)でPLを確認する最大のメリットは、「先月と比べて、何かがおかしい」という異常値(病気の初期症状)にその場で気づき、即座に軌道修正ができる点にあります。経営の舵取りを誤らないためにも、月次での確認を自社の鉄則にしてみてはいかがでしょうか。

2. 社内の健康診断でまず注目すべき「2つの利益」

経常利益は金融機関などの外部が特に注目する指標ですが、会社における毎月の健康状態チェックという位置付けであれば、まずは以下の「2つの利益」に集中してチェックすることをお勧めします。

そして、チェックする際は「金額」だけでなく、金額を売上高で割った「率」も合わせて見ていきます。体重だけでなくBMIの変化や体脂肪率も見るようなイメージで、両方とも大事な指標です。

注目ポイント①:売上高に惑わされない「粗利益(売上総利益)と粗利率」

経営状態を見るとき、つい「売上高」の増減に一喜一憂してしまいがちです。よく年商〇億円という記事なんかに目が引かれたりしますが、粗利率の適正水準は、製造業、卸売業、サービス業など、業種によって大きく異なります。そのため、売上規模を比較するのではなく、「自社の過去の粗利率と比べて推移が下がっていないか」を見ることが社内の健康診断としては重要です。

売上高が増えていても粗利率が下がっている場合は、コスト高のしわ寄せや、不適切な価格設定というリスクが隠れているサインです。

注目ポイント②:本業の「稼ぐ力」を表す「営業利益と営業利益率」

粗利の次に必ずチェックしたいのが、営業利益です。これは、粗利から人件費や家賃、広告費といった、いわゆる「固定費(販売費及び一般管理費)」を差し引いた後に残る利益です。

営業利益は、企業が本業でどれだけ効率的に稼げているかという「本業で稼ぐ力」を表します。もし、粗利がしっかり出ているのに営業利益が残っていないのであれば、売るためのコスト(固定費)のどこかにムダが発生している、あるいは組織の運営効率が落ちている可能性があります。

3. 自社で実践する「PL自己分析」3つの注意点

毎月のPLを経営陣や幹部メンバーで確認する際、より効果的な「健康診断」にするために意識したい3つの注意点があります。

注意点①:数字の「結果」だけでなく「要因」まで追いかける

「今月は営業利益が下がった」という結果だけを見て一喜一憂したり、現場を責めたりするだけでは経営は改善しません。「なぜ下がったのか?」という要因(原材料費の高騰なのか、特定の案件での手戻りロスなのか、あるいは想定以上の広告費を投入したからなのか)まで、数字の背景にある現場の動きを具体的にセットで追いかけることが大切です。

具体的には、粗利率が低下したのであれば、原材料費や加工費などの直接的な経費の増加が影響しています。物価高騰の影響度がどのくらいあるのか、より安く仕入れることはできるのか、などの対策を考えることにもつなげられます。

注意点②:他社平均ではなく「自社の過去データ」と比較する

「同業他社の平均粗利率は〇%」という一般的な指標に囚われすぎる必要はありません。前述の通り、自社のビジネスモデルや強みによって最適なバランスは異なるからです。

他社に比べてコストが掛かっているから下げる判断をされた結果、そのコストをかけているからこそ自社の強みが発揮できていたのに、自ら強みを消してしまったという事例もあります。

目指すべきは、「過去の自社のベストな状態」や「前年同月の自社データ」と比較して、今のバランスが崩れていないかをチェックすることです。

特に、1年、2年と毎月のデータを並べていくと、「5月は売上が下がる時期だから何かできないか」とか「12月には固定費が上がるからキャッシュを厚くしておかないと」といった時期的な特徴なども見えてきます。

注意点③:現状を客観的に見ることの重要性

自社の数字を見慣れていると、どうしても「うちはこういう業界だから」「この費用は昔からかかっているから仕方がない」といった、社内固有の『当たり前』フィルターがかかってしまいがちです。

自分の体重が増えてきても、「ちょっと食べ過ぎたし、またすぐ減るでしょ」とか「見なかったことにしよう」と、都合が悪いことには目をつぶってしまうものです。

自己分析を行う際は、「もし自分が外部の人間だったら、この数字をどう見るか?どうアドバイスするか?」という客観的な第三者の視点を持って眺めてみることをおすすめします。

他社へのアドバイスのようにちょっと引いて見ることで、当たり前の中に隠れていた曖昧な業務のやり方や、見落とされていたコストの要因に気づくきっかけになります。

まとめ

今回は、社内の健康診断として、毎月のPLにおける「粗利」と「営業利益」の重要性、そして自己分析の注意点について考えてきました。自社の今の経営状態を数字で正しく、かつ客観的に把握できれば、次に「どこを改善すればいいのか」という具体的な処方箋が見えてきます。

体重も血圧も過去の推移を記録しておくと、異常が見付けやすいだけでなく普段から気を付けるようになります。当然、結果にも大きく変わってきますよね。私自身、ダイエットをすると決めたものの記録をしないで臨んだときには、体重計の数字を「見なかったことにしよう」と思ってしまいますし、それが続くと体重計に乗ることもやめてしまいます。でも、嫌な結果でも記録しておくと振り返りもできますし、「もう少しがんばらないと」という気持ちも出てきます。

まずは、はじめの一歩として、これまでのPLを見比べながら、「粗利率」や「営業利益率」の変化を眺めてみることから始めてみませんか。

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